「マシュマロテスト」って聞いたことがありますか?
簡単に説明すると、4歳児にマシュマロを与えて、我慢できるかどうかを試したテストです。
今回は、そんな「マシュマロテスト」についてのレポートです。
マシュマロテストの要約
マシュマロテストとは?
・1960年代後半~1970年代前半に、スタンフォード大学の心理学者であるウォルター・ミシェルが実施
・子ども時代の自制心と将来の社会的成果の関連性を調査した著名な実験
当時の実験内容
・被験者の子どもは、気が散るようなものがない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るように言われる。
・机の上には、マシュマロが一つのったお皿がある。
・実験者の大人は、以下を言って部屋を出る。
私はちょっと用がある。
それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。
私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ。
・15分後に部屋に戻り、マシュマロを食べているかどうかを確認する。
被験者の子どもの選択肢は
1、我慢できずに1つもらう
2、我慢して2つもらう
実験中、子どもたちの行動
当時の実験では、子どもたちの行動は隠しカメラで記録されていました。
一人で部屋に残された子どもたちは、様々な行動をとっています。
実験中に子どもたがとった様々な行動
・自分の髪の毛を引っ張る
・机を蹴る
・マシュマロをなでる
・マシュマロの匂いをかぐ
・目をふさぐ
・椅子を後ろ向きにして見ないようにする
・歌を歌う
マシュマロテストの結果
マシュマロテストの結果、15分我慢できた子どもは3人に1人ほどで、マシュマロテストを我慢できた子どもには自制心があり、その結果成功したのだと長年言われてきました。
我慢できずに1つもらう→自制心がなかった
我慢して2つもらう→自制心があった
映像の分析の結果、我慢できた子どもは、目を反らしたり、後ろを向いたりして、マシュマロから注意を逸らしていた傾向があったそうです。
マシュマロを見つめたり触ったりする子どもは、我慢できずに結局食べてしまう傾向が高かったことも分かっています。
1988年の追跡調査
実験から18年後、マシュマロテストを受けた子どもたちの追跡調査と大学進学適性試験(SAT)が行われました。
1988年の追跡調査
・ウォルター・ミシェルは自分の娘を実験に参加させており、娘の成長から自制心と人生の成功に強い関係性があると感じたため、追跡調査を実施
・当時の実験で、マシュマロを食べた子どもたちと食べなかった子どもたちをグループにして比較
・大学進学適性試験(SAT)の点数を集計
1988年の追跡調査の結果
・マシュマロを食べなかった子どもたちのグループは、成長してからも自制心があり、周囲から優秀と評価されていた
・大学進学適性試験(SAT)の点数において、トータルスコアが平均で210ポイント差があった
2011年の追跡調査
実験から23年後の追跡調査では、マシュマロテストを受けた子どもたちの大脳の撮影が行われました。
2011年の追跡調査
・大脳を撮影した結果、マシュマロを食べなかった子どもたちのグループは、集中力に関係する脳の部位(腹側線条体と前頭前皮質)が活発であり、マシュマロを食べた子どもたちのグループとの大きな差が認められた
・この傾向は生涯継続されるとされた
1988年と2011年の追跡調査より、幼児期において、IQよりも自制心の強さの方が将来のSATの点数にはるかに大きく影響すると結論づけられ、この実験はスタンフォード大学で「人間行動に関する、最も成功した実験のうちの一つ」と評価されました。
マシュマロテストの再実験
マシュマロテストを受けていた子どもたちは、スタンフォード大学付属の幼稚園の生徒であったため、大学関係者のみで行われた限定的なものであり、結果に疑問を抱くと考える研究者たちが再実験を行いました。
マシュマロテストの再実験
・ニューヨーク大学のテイラー・ワッツとカリフォルニア大学のグレッグ・ダンカン、ホアナン・カーンの3人が2018年に実施
・ウォルター・ミシェルの実験では、スタンフォード大学付属の幼稚園の生徒186人が被験者であったが、人種や民族、親の学歴や経済的な背景などにおいてさまざまな被験者を900人以上対象とした
マシュマロテストの再実験の結果
マシュマロ再実験の結果として、以下が導き出されました。
・マシュマロを我慢できた子供たちは裕福な家庭環境にあった
・自制心の程度は、3歳までの家庭の年収と環境に依存して決まる
つまり、ウォルター・ミシェルの実験において、我慢できずに1つもらう→自制心がなかった我慢して2つもらう→自制心があった
とされていた結果は、以下へと捉え方が変わったのです。
我慢できずに1つもらう→貧しい家庭の子ども
我慢して2つもらう→裕福な家庭の子ども
マシュマロテストが導き出す家庭環境とは
裕福な家庭の子どもと貧しい家庭の子どもでは、「社会や未来に対する期待値」が異なります。
裕福な家庭の子ども
・大人との約束を守ることで利益を得た経験がある
・2つ目のマシュマロを待っている我慢はさほど難しくない
貧しい家庭の子ども
・親に約束を守られた経験が乏しい
・15分待っている間に、マシュマロが誰かに奪われてしまうという危機感を持つ
・マシュマロを我慢して2つ目をもらうよりも、目の前のマシュマロを優先してしまう
育った家庭環境によって報酬の考え方が変わり、貧しい家庭の子どもにとって、目の前のマシュマロを優先する方が2つ目のマシュマロを我慢して得るよりも合理的になりえたのです。
マシュマロを我慢できた子供たちは裕福な家庭環境にあり、自制心の程度は3歳までの家庭の年収と環境に依存して決まる
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